MEMORIAL PROJECT 創立150周年記念事業・イベント

【開催報告】アジア各国の学生と共創するACEサマーインテンシブプログラムを立教大学で開催

大学

立教大学の国際化戦略の一環として2021年度からスタートした「ACEプログラム※1」。アジアトップクラスの大学※2と提携し、リベラルアーツ教育をベースに国際社会の諸課題について思考し、行動できる人間の育成を目的としています。同プログラムは、提携大学への長期交換留学やオンライン留学、短期インテンシブプログラムなどを柱としています。2024年8月1日(木)から9日(金)まで、立教学院創立150周年記念企画の一つとしてサマーインテンシブプログラムを立教大学で実施しました。その内容をご紹介します。

※1 ACEプログラム:「リベラルアーツ教育」を共同テーマとした大学間国際コンソーシアム「The Asian Consortium for Excellence in Liberal Arts and Interdisciplinary Education(The ACE)」の中核を担うプログラムの総称。2021年度文部科学省「大学の世界展開力強化事業~アジア高等教育共同体形成促進」に採択。
※2 ソウル大学校、北京大学、シンガポール国立大学。

 

 

テーマは「災害に強い社会をどうつくるか」
 

ACEプログラムにおいて年2回開催されるインテンシブプログラムは、参加大学が持ち回りでホスト校となります。今回、本学は2022年度夏季に続き2回目のホスト校となり、ソウル大学校、北京大学の学生を招いてプログラムを実施。各大学から9人ずつ計27人の学生が参加しました。インテンシブプログラムでは毎回テーマを設定し、それに基づく学びを展開しています。今回のテーマは「アジアにおける次世代のために、災害に強い社会をどうつくるか」。地震や台風といった日本で特に多い自然災害について、アジア各国の学生と分野横断的に考えていくのが狙いです。

今回のプログラムは大きく分けて3部構成で実施しました。自然災害の基礎知識や災害時に重要となるコミュニケーションスキルなどを学ぶ第1部。1995年の阪神・淡路大震災の中心地となった兵庫県神戸市でフィールドワークに取り組む第2部。学んだ内容をグループでまとめ、プレゼンテーションを行う第3部。これらのプログラムを通して、参加学生は交流を深めながら多くの学びを得ました。

 

なお、フィールドワークの舞台が神戸となった背景として、阪神・淡路大震災から約30年が経ち復興の様子を検証しやすいこと、多くの外国人が被災しコミュニケーション面での課題が顕在化したことなどが挙げられます。
 

 

オープニングセレモニー~東京での学び

 

初日となる8月1日(木)は、赤坂インターシティコンファレンスにてオープニングセレモニーを開催。西原廉太総長、松井秀征国際化担当副総長のあいさつで始まり、来賓である駐日本国中華人民共和国公使参事官(教育)の杜柯偉(トカイ)氏、駐日本国大韓民国大使館教育官の梁鎬錫(ヤンホソク)氏から本学創立150周年への祝辞と本プログラムへのメッセージをいただきました。

 

西原廉太総長
松井秀征国際化担当副総長

 

 

駐日本国中華人民共和国公使参事官(教育) 杜柯偉 氏
駐日本国大韓民国大使館教育官 梁鎬錫 氏

 


次に、ソウル大学校学長北京大学元培学院学院長シンガポール国立大学事業担当者から届いたメッセージ動画を上映し、北京大学副学長からの祝辞を司会より読み上げました。

 

続いて、参議院議員の加田裕之氏から基調講演がありました。阪神・淡路大震災当時、新聞社に勤務し、震災の取材を通して政治の道を志した加田氏は、「自助・共助・公助」というキーワードと共に、災害時に行政や地域、市民が果たす役割などについて講演しました。参加学生からは次々と質問が寄せられ、活発な意見交換がなされました。

 


 

セレモニー終了後は、加田氏と丸山秘書官の案内で参議院本会議場と国会議事堂内を見学。その後、池袋キャンパス太刀川記念館でのウェルカムレセプションをもって初日を締めくくりました。
 



2日(金)は気象庁による出前講座からスタート。日本における大雨災害等に関するレクチャーを受けました。続いて、ゲスト講師の河合誠雄氏(ジンマー・バイオメット合同会社・ガバメントアフェアーズ)によるリーダーシップ&リスクコミュニケーションのワークショップ。災害時に他者といかにコミュニケーションを取りながら対応していくのかを考えました。午後は翌日の疑似避難体験に備え、ハザードマップを片手に池袋の街を散策。災害時にどこへ、どのように避難するかを検討しました。
 

3日(土)の午前は疑似避難体験。災害が起きたと仮定してグループごとに決めた場所へ避難しました。その際、一部の学生は「エアキャップを目の周りに巻いて見えづらくする」「段ボールを関節に巻いて歩きづらくする」「腹部に重りを付ける」といった方法で高齢者や妊婦を疑似体験。自由がききづらい身体で避難することで、困難を抱えた人々がどのように逃げるのか、どのように街をデザインしていくべきなのかなど、身をもって考えるきっかけになったようです。午後は池袋防災館で、過去に起きた大震災の揺れを実際に体感しました。


 

多くの気付きを得た、神戸でのフィールドワーク

 

4日(日)は東京から神戸に移動し、翌5日(月)から神戸でのフィールドワークが本格的にスタート。午前は、防災・減災を専門とする兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科・青田良介教授による講義。午後は、阪神・淡路大震災による壊滅から復興を遂げた神戸市長田区の大正筋商店街を散策しました。街はどのように再生したのか。どのような課題が残ったのか。学生たちはそれぞれの視点で観察し、多くの気付きを得る機会となりました。

 

6日(火)の午前は青田教授による多文化共生をテーマとした講義。その後、人と防災未来センターにて阪神・淡路大震災の映像などを視聴し、震災への理解を深めました。午後は、たかとりコミュニティセンターで、阪神・淡路大震災の被災者へのヒアリングを行いました。

 

7日(水)は海外移住と文化の交流センターにて、在日外国人コミュニティの方々へのヒアリング。被災時の外国人コミュニティのあり方、行政の支援などについて考えました。
 

たかとりコミュニティセンター
長田区の街歩き


 

学びの成果を形にしたファイナルプレゼンテーション

 

8日(木)は再び東京に戻り、ファイナルプレゼンテーションの準備を行いました。

最終日となる9日(金)の冒頭では、コーディネーターの劉雯(リュウブン)特任准教授より全行程の振り返りを行いました。ファイナルプレゼンテーションには「スキット(寸劇)」形式を採用。学生たちは劇だけでなく動画や音響を効果的に使用し、「災害に強い社会をいかに作るか」というテーマで、創意工夫あふれるプレゼンテーションを繰り広げました。
 

5グループのプレゼンテーション終了後は、各大学から参加した教員による講評がありました。そして劉特任准教授と松井副総長からの全体講評を経て、修了証の授与と記念撮影で締めくくりました。

 

 
 


最後は、グローバルラウンジにて「フェアウェル(別れ)・ランチ」。9日間のプログラムで切磋琢磨せっさたくました学生たちは、別れを惜しみつつ、お互いの労をねぎらいました。
 


 

2024年サマーインテンシブプログラムを終えて
―担当教員からのメッセージ―

 




 

 

立教大学グローバル教育センター 特任准教授
劉雯

今回、立教大学が会場になったことで、本学の学生がホストとしての自覚をしっかりと持ち、率先して参加者をサポートする姿に感心しました。本学では全学的にリーダーシップ教育に力を入れており、普段の学びの成果を存分に発揮してくれたと感じます。意見が衝突するような場面でも、インクルーシブな姿勢で多様な意見を受け入れる様子が印象的でした。だからこそ、ソウル大学校、北京大学の学生からも積極的に発言する様子が見られ、そうした関係性が最終日の優れたプレゼンテーションに表れていたように思います。

近い文化を持つアジア圏の学生との協働を通じて、お互いの類似性や共通項を見つけながらも多様性を認め合っていく点がACEプログラムの特徴的なポイントだと考えます。これからの国際関係を背負っていく若者たちですから、今回の経験が、今後の自分たちのアクションを考えるきっかけになればうれしいです。 

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