MEMORIAL PROJECT 創立150周年記念事業・イベント
―共に生きる未来をつくる―
埼玉県知事 大野 元裕 × 立教大学総長 西原 廉太
新座キャンパスは、1990年の開校当初より「地域に開かれたキャンパス」を掲げています。学生団体によるボランティアやイベントを通した地域住民との交流、学内施設を新座市民に開放するなど、積極的に地域連携・地域貢献に取り組んできました。立教学院創立150周年を記念して、新座キャンパスで行われた大野元裕埼玉県知事と西原廉太総長の対談では、埼玉県と立教大学との強固なつながりや地域連携の意義、今後の展望などについて確認しました。
┃ 地域から親しまれる新座キャンパス。隣接する県道が「立教通り」に
――大野知事と西原総長は1987年に大学をご卒業されていますね。学生時代について教えていただけますか。
大野 国際関係学や哲学を学んだり、課外活動でアメリカンフットボールに励んだり、いろいろなことに挑戦してきたつもりです。中でも一番誇れるのは、大学時代を共に過ごした友人の存在です。
西原 3回生の時、約1年をかけて日本のあちこちを巡り歩いたことが印象深いです。北海道でアイヌの方々と交流したり、沖縄に行ったり。現地の人との出会いを通じて「自分は何者なのか」という問いに向き合い、自分が生きてゆく道を見定めた、貴重な経験でした。
――立教大学新座キャンパスに関するお話を伺います。
まずは西原総長、新座キャンパスの特徴について教えてください。
西原 立教大学は東京都豊島区の池袋と、埼玉県の新座市にキャンパスを有しています。どちらのキャンパスも、東京の都心や埼玉の中心部からアクセスしやすく、大変便利な立地にあるのが特徴の一つです。新座キャンパスには、観光・コミュニティ福祉・現代心理・スポーツウエルネスの4学部・研究科があり、約5,000人の学生が学んでいます。緑の多い、ゆとりある広々とした環境です。
※1 ロフト教室
新座キャンパスにある教室。最新の自動収納式の観客席を備え、本格的な公演が可能な「ロフト1」と、4Kデジタルプロジェクターを備えた「ロフト2」がある。
西原 本当ですか。ありがとうございます。学生たちもとても喜ぶと思います。
大野 地域に愛されている学校ですから、今後も地域との交流を積極的に図っていただきたいです。
――新座キャンパスはスポーツ施設が充実しており、多くの体育会が全国レベルでの活躍を見せています。中でも陸上競技部男子駅伝チームは2年連続で東京箱根往復大学駅伝競走(箱根駅伝)への出場を果たしています。大野知事はスポーツが趣味とのことですが、駅伝チームの活躍をどのようにご覧になっていますか。
大野 立教大学では、創立150周年に向けた記念事業として「立教箱根駅伝2024」事業に取り組まれてきました。箱根駅伝の節目となる第100回大会(2024年1月)に出場し、とても素晴らしい成果を上げられましたね。埼玉県民はこぞって応援してきましたし、今後の活躍にも期待しています。
┃ 学びの深化とともに、地域も発展していく
――地域連携の観点で大学が取り組んでいることを教えてください。
西原 スポーツウエルネス学部の教育・研究活動のために、新棟を建設中です。2025年4月の運用開始を予定しており、学生や教職員のみならず地域の方々にも利用いただけるような、イノベーションの創出拠点となり得る施設として計画しております。ぜひ期待していただければと思います。
――立教大学と埼玉県の取り組みについて伺います。立教大学と武蔵野銀行(本部・埼玉県さいたま市)との産学連携協定に基づき、観光学部の学生が埼玉県の観光による地域活性化「ぶらって埼玉プロジェクト」に取り組まれています。プロジェクトについて教えていただけますか。
西原 地域の特産品や観光名所などを冊子にまとめた「まち歩きマップ『ぶらって』」シリーズ(※2)を、2007年から制作しています。観光学部の学生を中心に、「ぶらって幸手」(2008年度)や「ぶらって行田」(2010年度)など、11作手掛けてきました。草加版を制作した2023年度は、学生たちと共に大野知事のもとへ完成のご報告に上がって。お褒めの言葉をいただき、学生も感激しておりました。
※2 「ぶらって」シリーズ
2007年、立教大学は埼玉県の地域活性化に貢献することを目的に武蔵野銀行と産学連携協定を締結。以降、「ぶらって埼玉プロジェクト」の一環としてまち歩きマップを制作してきた。2024年度は12作目となる「ぶらって朝霞」を制作。
大野 学生目線で草加の街を見つめ、若い人が楽しめるような観光マップを制作されていることに感心しました。観光においては、街の魅力をただ知ってもらうだけではなく、やはり街に来てグルメやお土産など消費活動をしていただくことが重要です。ぶらってシリーズでは「行きたくなる」情報がたくさん紹介されています。デザイン性も優れていて、読み物としても完成された1冊だと思います。加えて埼玉県では、観光客には県内を周遊してほしいとも考えています。家族連れや友人同士で、これまでのぶらってシリーズを片手に、埼玉のいろいろな場所を巡っていただきたい。今後も埼玉の観光を立教大学と共に盛り上げたいと思っています。
――立教大学と埼玉県は包括連携協定に基づく連携推進の一環として、2023年11月に学生による政策提言(※3)を大野知事へ行いました。当日は「防災」「男性の育休」をテーマに知事と意見交換を行われましたが、いかがでしたか。
※3 政策提言
若者の感性を県政に生かしつつ、学生に生きた学習の場を提供することを目的とした取り組み。2023年11月22日、コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科の原田峻准教授と濵田江里子准教授がそれぞれ指導するゼミの学生が参加。
大野 学生の皆さんには、事前に県政出前講座の受講や調査活動を通じて政策研究に取り組んでもらった上で、埼玉県が長年抱える「防災」「超少子高齢化」という課題に対して、コミュニティ福祉学部の学生から提言をいただきました。若者の防災意識の向上策について、学生からは「若者に人気のキャンプやアウトドアといった要素を取り入れてはどうか」という意見や、男性の育休取得に関しては「人員不足や業務引き継ぎによる負担を軽減するために業務委託システムを導入してはどうか」といったアイデアが出ていました。もちろん、実現に向けてはブラッシュアップが必要な部分もありますが、社会が大きな転換期にある今、若い方々の意見を直接聞くことができたのは、県政に携わる者にとってかけがえのない財産になったと感じます。昨年からスタートした取り組みですが、これからいろいろな形で積み上げていきたいですね。
西原 何よりうれしく思うのは、学生の提言を実際に政策に生かそうとしてくださっていることです。2024年8月には、新座キャンパスで防災とアウトドアを連携させたイベント(※4)を実施することができました。自分たちの提言が目に見える形になるのは、一生懸命取り組んだ学生にとって、これほど励まされることはありません。昨年はコミュニティ福祉学部でしたが、今年は観光学部の学生が政策提言に向けて準備中です。ぜひまた、学生の意見を聞いていただければ幸いです。
※4 防災とアウトドアを連携させたイベント
2023年に実施した政策提言の提案内容を踏まえ、2024年8月3日、主催する埼玉県とコミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科の原田峻准教授のゼミが協働で開催。
大野 私たちも、学生が持つ知識と鋭い感性が反映された声を県政に実装する前提で臨みます。とても楽しみにしていますよ。
┃ 知の集積地である大学に求められるミッション
――西原総長、最後に立教大学と埼玉県の連携の展望をお聞かせください。
西原 大学の使命とは、教育、研究、そして地域・社会貢献です。地域との結び付きや地域への貢献は大学にとっても重要なミッションですので、今後も一層関係を深めていきたいと思っております。
――大野知事、今後の立教大学や学生に何を期待されますか。
大野 大学は知を集積するだけではなく、蓄積された知を社会に還元する重要な機関であると捉えています。新座キャンパスは、観光や福祉、心や身体の健康といった、人が豊かに生きるために欠かせない分野を扱う学部が集まっており、私たちも大いに期待しています。また立教大学全体では、地球規模の課題に向き合う思考力や、変容する社会に柔軟に対応できる変革力を身に付けたグローバルリーダーの育成を掲げておられますね。グローバルとは、さまざまな知見をローカルにも還元することだと思うので、埼玉県としても立教大学のさらなる進化・発展を願っています。最後に付け加えると、東京六大学のうち、埼玉県知事を輩出していないのは立教大学だけなんです。立教出身の優秀な方に埼玉県をリードしていただけると、個人的にとてもうれしいです。
西原 多大な期待をお寄せいただき、ありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
進行:塚田 舞(テレビ埼玉アナウンサー)
※記事の内容は取材時点(2024年6月14日立教大学新座キャンパスにて)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。対談は同年7月6日にテレビ埼玉にて放映されました。